事業再構築補助金の五次募集の応募期間が締め切られました。(2022年3月末日時点)
採択率およそ45%の補助金。
折角、労力を掛けて申請しても、採択されないと益々経営は苦しくなります。
申請するからには、勿論採択されたいですよね。
この記事では、公表されている四次応募までの事例をもとに、採択率を上げるためにの対策やポイントについて解説していきます。
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事業再構築補助金の事例から見る採択されるためのポイント
今までの採択事例を見てみると、採択されている事例にはいくつかの共通点があるようですね。
採択事例共通のポイント
- 企業の「将来像」が、明確に伝わってくる
- ストーリー展開がある
- 会社の現状、業界の現状をしっかりと分析している
- 事業計画書がわかりやすい
順に解説していきます。
企業の「将来像」が、明確に伝わってくる
企業のありたい姿「将来像」が明確になっており、その将来像が地域社会や従業員の雇用、業界や経済にどのように影響を与えていくかを明確に伝えている所がポイントです。
その場しのぎの経営策ではなく、「将来像」にたどり着くための逆算で、「現状の課題」は何であるか?が明確に記載されています。
また、その「将来像」と「現状の課題」のギャップを埋めるための方法として、事業を再構築していくというメッセージが伝わってくる所も大切です。
ストーリー展開がある
事務局のホームページでも公開されている「動画」では、補助金審査に関わる中小企業庁の経営支援部長はこのようにお話ししています。
「ストーリー展開こそが中小企業を強くするうえで最も大切な考え方であり、事業再構築補助金の採択をしたくなるコツである」
事業計画書を読む審査員の方も人間なので、なんの関連もない情報を羅列しているだけでは、書いている内容が頭に入ってきません。
起承転結のようなストーリーになっていると、読み手の理解が深まります。
会社の現状、業界の現状をしっかりと分析している
よく使われるツール「SWOT分析」のフレームワークに照らし合わせて、会社の現状、業界の現状を分析していきます。
- 強み(Strengths)
- 弱み(Weaknesses)
- 機会(Opportunities)
- 脅威(Threats)
を分かりやすく分析する事で、事業計画に求められる「課題」と「解決策」を具体的に示せます。
「SWOT分析」については、下記で詳しく解説します。
事業計画書がわかりやすい
文章だけの味気ない計画書でなく、図や写真なども使ってビジュアル化し、審査員があたかも一緒に事業を作っているメンバーと勘違いするような工夫もポイントが高い様です。
「わかりやすい事業計画書のポイント」については、下記で解説します。
2022年3月28日より事業再構築補助金六次募集が開始されました。募集締め切りは、2022年6月30日18時までです。
実際の採択された事例
それでは、実際に過去に採択された事例を上記のポイントに照らし合わせてみていきましょう。
飲食店の事例
「株式会社中心屋」採択事例
和歌山県
<<新分野展開>>
「飲食店で培ったおもてなしの心とノウハウを活かす高齢者配食事業へ新展開」
①「将来像」
飲食店経営から、今後の拡大が期待される高齢者宅配市場へ参入しV字回復を目指す。
②「ストーリー」
競合他社との差別化について、創業19年の経営実績と育成力、ブランド力を活かす、具体的な方法が挙げられている。
③「会社の現状」
緊急事態宣言により大きく打撃を受けた売上をカバーするべく、テイクアウトや宅配を検討はしたものの、施設設備が整わないままの中途半端な形では回復の見込みがない。
④「わかりやすさ」
写真や表、比較グラフをふんだんにつかっており、視覚的にもわかりやすく、見やすい構成になっている。
また、該当要件を一つずつ丁寧に対応しており、審査員の判断がしやすい。
宿泊業の事例
十勝シティデザイン㈱採択事例
北海道
<<新分野展開>>
「ワーケーション滞在向けのコワーキング機能付き宿泊施設の開業」
①「将来像」
コロナ禍に伴ったワーケーション市場の拡大の流れを受け、首都圏からの新規顧客獲得に特化させたサービスをアピールしている。
②「ストーリー」
2019年〜2020年のオリンピック先行イベントの実施や、帯広市・第一生命との連携協議等の締結のアピール等している。
また、ワーケーション関係の事業の、新分野について、既存の宿泊施設の事業との比較表で説明されている。
③「会社の現状」
利便性、付加価値サービスの提供、地域の資源や自治体との連携、東京での活動拠点を持つところ等を強みとして上げている。
逆に弱みの客席数の少なさや繁閑期の格差等をしっかりと上げて分析している。
④「わかりやすさ」
別紙としてイメージ画像を分段に掲載しており、事業内容が見てわかりやすくなっている。
卸売・小売業の事例
「株式会社三本末茶屋」採択事例
栃木県
<<事業転換>>
「地域資源を活用した惣菜製造のためのセントラルキッチン新設と食品製造卸売への事業転換」
①「将来像」
新たに調理加工施設を新設して地元食材を使用した冷凍調理食品の製造から卸売販売等することで、新たなる市場を獲得し、新たなる収益の柱を作り出す。
②「ストーリー」
日光ブランドの強みを活かして、他社との大きな差別化を図り、また、ECサイトや都内のチェーンストアでの販売等の新たなる市場を獲得する。
③「会社の現状」
緊急事態宣言に伴う不要不急な外出の制限により、観光物産や飲食の需要が大きく減少し、収益が減ってしまっている。
④「わかりやすさ」
事業のイメージや商品のイメージは写真を多数使用しイメージしやすくしている一方で、強みや弱み等の現状認識に対しては文章として纏められており、メリハリがついており理解しやすい。
サービス業の事例
「株式会社八芳園」採択事例
東京都
<<業態転換>>
「食・イベント分野のDX推進により総合プロデュース企業へ転換」
①「将来像」
新事業の顧客ニーズや市場分析、価格的、性能的の優位性、収益性が具体的かつ明確に記載されている。
②「ストーリー」
既存事業の実績を言及し、強みとして、その強みを活かした新事業に繋げている。
③「会社の現状」
現在の事業環境の前向きな点に触れ、蓄積したノウハウを強みとして押し出している。
④「わかりやすさ」
事業計画書の冒頭に目次を設け、わかりやすくしている。
業界、業種が違っても、ポイントを押さえてアピールしている企業は採択されていますね。
2022年3月28日より事業再構築補助金六次募集が開始されました。募集締め切りは、2022年6月30日18時までです。
SWOT分析とは
SWOT分析とは事業を取り巻く状況についての分析です。上でも記載した通り、
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
の頭文字をとって「SWOT」です。
公募要項にはSWOTという言葉は出てきませんが、下記の記述があります。
○ 申請する事業再構築の類型について、事業再構築指針との関連性を説明してください。
1:補助事業の具体的取組内容
1 現在の事業の状況、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性、事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)、今回の補助事業で実施する新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組について具体的に記載してください。
引用元事業再構築補助金公式HP
事業再構築補助金の事業計画書の為のSWOT分析は、現状のSWOT分析も勿論ですが、何を目指してSWOT分析するかが重要になります。
「なぜその新事業を実施する価値があるのか?」を説明するために、SWOTのすべてが新事業に繋がるように分析する必要があります。
- 自社にはこのような強みがある ⇒ そのために新事業にチャレンジしたい
- 自社にはこういう弱みがある ⇒ それを補うために新事業にチャレンジしたい
- 外部環境にこういう機会がある ⇒ そのために新事業は成長する
- 外部環境にこういう脅威がある ⇒ 新事業にチャレンジする事で脅威に対抗できる
このようなストーリーを意識したSWOT分析を心がけると採択の可能性が広がります。
わかりやすい事業計画書のポイント
事業計画書は、視覚的にも整っている必要があります。例えば、
- 1ページにつき1つ以上の画像や図表を配置する
- 図表はなるべくシンプルでわかりやすいものにする。
- 市場動向等はグラフを積極的に用いる。
- 見出しを使い分けて、見やすくする。
- 色を絞る
- 英数字の全角半角や文字の級数を規則的に整える
技術的なものでの見た目を整えることももちろん大切です。
が、一番の目的は、審査官が読んでいて理解しやすくすることが目的です。
審査官の方も何千件との事業計画書に目を通すことになります。その中でも、読みやすいもの、理解しやすいものが自然に心に残りやすくなるでしょう。
好事例
HPにて紹介されていた好事例
新聞屋の飲食業デリバリーサービスへの転換
好事例として紹介されていたのは、新聞屋の余剰になった倉庫を、地元にある飲食業が使用するデリバリー拠点へ転用して活用する事例です。
コロナの影響を受けて新聞屋は、折込チラシの需要が激減してしまっており、余剰倉庫が多数出てしまっています。
そこで、新聞屋は余剰になった倉庫を、地元にある飲食店が使用するデリバリーの拠点として有用する事を計画しました。
新聞屋と飲食業の二つの業界は全く繋がりがないように見えますが、新聞屋の最大の強みを活かしました。
- 「地域の家を全て熟知している」
- 「雨の日でも雪の日でも、365日、確実に配達出来る」
この強みは、飲食業のデリバリー事業にも応用が利きます。
また、コロナの影響で飲食業界もイートイン需要が減り、宅配等に打ち出すも、ノウハウ・設備がなく困っているのも現状です。
新事業に転換する事で、「倉庫の余剰」という現状の課題を埋める事ができ、「配達のノウハウ」という強みを生かせる。
そして、飲食業界、また、地域社会への助けにもなる。
まさに、事業再構築のストーリー性にぴったりのシナリオです。
事業計画書フォーマット
事業再構築補助金の事業計画書には、ページ数の規定から始まり、いくつもの規定があります。
2022年3月28日より事業再構築補助金六次募集が開始されました。募集締め切りは、2022年6月30日18時までです。
事業再構築補助金の計画書とは違いますが、初めて事業計画書等を作成する方には、下記のサイトも参考にしてみるのもいかがでしょうか。
おまけに:コンサルタントの案件獲得方法
自社や業界のSWOT分析や事業計画書等の準備、「未来像」に向けたストーリーの作成等、小さな企業や個人事業主には通常業務をこなしながらはとても大変な労力です。
そんな気持ちが分かり、個人の状況に寄り添って支えてくれるコンサルタントも、需要は多いようです。
補助金等の制度や事業の計画等に精通するだけでなく、顧客の気持ちに立って考えられるコンサルタントは、自然に獲得案件も多くなります。
本記事としては、余談になりますが、コンサルタント向けの案件の取り方、成功方法も載せておきます。
まとめ
- 採択された事例から見る共通ポイント
- 実際の採択された業種別の事例
- わかりやすい事業計画書のポイント
- 実際あった好事例
- 実際の事業計画書の書き方
と見ていきました。
実際の採択事例からイメージを膨らませて、自社の事業に活かして頂き、採択を勝ち取ることのお役に立てれば幸いです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。