コロナ禍で厳しい状況にある企業にとって、事業再構築補助金は強い味方です。しかし、その申請要件は変更されることもあり、理解が難しいと感じている方も多いと思います。
また、事業累計ごとの違いもあるので、さらにややこしく感じるでしょう。今回は、事業再構築補助金の6つの事業類型と、それぞれの申請要件について、最新情報を詳しく解説していきます!
Table of Contents
事業再構築補助金|6つの申請要件
事業再構築補助金の第9回公募では、6つの事業類型が設けられています。
- 通常枠
- 大規模賃金引上枠
- 回復・再生応援枠
- 最低賃金枠
- グリーン成長枠
- 原油価格・物価高騰等緊急対策枠(緊急対策枠)
各事業類型は何が違うんですか?
補助金額と申請条件がそれぞれ異なります。主な要件を次の表にまとめました。
事業類型 | 要件① | 要件② | 要件③ | 要件④ | 要件⑤ |
---|---|---|---|---|---|
通常枠 | 売上10%減少 | 指針に沿う取り組み | 認定支援機関の策定 | - | - |
大規模賃金引上げ枠 | 通常枠要件を満たす | 従業員101人以上 | 8,000万超の申請 | 最低賃金増加 | 従業員増加 |
回復・再生応援枠 | 通常枠要件を満たす | 売上30%減少 | 協議会の策定 | - | - |
最低賃金枠 | 通常枠要件を満たす | 最低賃金雇用率 | 売上30%減少 | - | - |
グリーン成長枠 | 認定支援機関の策定 | 年率5.0%成長見込み | グリーン分野の取り組み | - | - |
緊急対策枠 | 通常枠要件を満たす | 売上10%減少(現有高騰前後) | - | - | - |
補助金額は同じ枠でも従業員数に応じて異なります。通常枠以外の枠の方が申請が通りやすい傾向があるようですが、まずは要件を満たしていることが大前提です。
企業の現状に合った枠を選ぶために、まずはそれぞれの要件をしっかり確認しましょう。それでは、6つの枠それぞれについて詳しく解説していきます。
通常枠
ポスト・コロナの世の中へ対応するための、新分野への挑戦や事業再編、それを通した事業拡大などを広く支援するための枠です。申請要件は次の4つです。
- 売り上げが減少している
- 事業再構築要件に沿っている
- 認定支援機関により事業計画書を策定してもらっている
これらの「通常枠」の要件は他の5つの枠にもすべて必要なので、他の枠に申請予定の方も目を通しておいてください。
申請要件①売上が減少している
コロナが流行する前と後で売上または付加価値額などが10%以上減っていることが条件です。
コロナ前後はいつの事を指すのでしょうか?
【コロナ前】
2019年1月~2020年3月の間
【コロナ後】
2020年4月以降
コロナ前の半年間のうち、任意の3ヶ月と、コロナ後の同じ月の3ヶ月を比較して計算します。
表で見ると分かりやすいですよ!
申請要件②事業再構築要件に沿っている
事業再構築補助金には、基本の要件があります。そもそも補助金の目的は、「事業の変更・拡大を支援するため」のもの。
そのため、補助金を受け取るためには何らかの形で事業の切り替えを行う必要があります。その「切り替え」には次の5つの方法があり、このいずれかを満たす必要があります。
【新分野展開】
新しい商品やサービスを提供することで、新たな市場に進出する。
【事業転換】
新しい商品やサービスを提供することで、「主たる事業」を変更する。
【業種転換】
新しい商品やサービスを提供することで、「主たる業種」を変更する。
【業態転換】
商品やサービスの製造方法や提供方法を大きく変更する。
【事業再編】
M&Aを活用して、上記4つの再構築のいずれかを実施する。
申請要件③事業計画書を策定する
作成する事業計画の条件は次の通りです。
策定条件
- 事業計画を認定経営革新等支援機関と策定する
- 申請額が3,000万円を超えた場合、金融機関にも策定に参加してもらう。
- 3~5年で付加価値額を3.0%以上増やす計画を立てる。
事業計画書は一般的に自作することも可能ですが、事業再構築補助金の場合、事業計画を「認定支援機関と策定する」ことが条件の一つになっているので注意しましょう。
認定支援機関の選び方はこちらの記事も是非、参考にしてください。
大規模賃金引上げ枠
比較的規模の大きい企業に対して、意欲的に従業員の増加を実施して事業全体の底上げを目指すための申請枠です。
通常枠の条件を満たした状態で、以下4つの条件も満たすような事業計画であれば申請対象となります。
- 従業員数が101名以上
- 申請額が8,000万円〜1億円
- 3~5年間以内に最低賃金を45円引き上げる計画を立てる
- 3~5年以内に、従業員を1.5%以上増やす計画を立てる
回復・再生応援枠
新型コロナウイルスの影響で受けた打撃が依然として強く、業績が回復しない企業に向けた申請枠です。
通常枠の条件を満たした状態で、以下2つの条件のどちらかを満たす必要があります。
- 2021年10月以降のいずれかの月の売上が2020年または2019年の同月と比べて30%以上減っている
- 中小企業活性化協議会の支援を受け再生計画等を策定している
小企業活性化協議会とは?
中小企業を応援する機関です。
収益アップや経営の改善等、経営者のチャレンジをサポートしてくれます。
中小企業活性化協議会は全国に配置されています。
一覧はこちらをご確認ください。
最低賃金枠
随時引き上げられる最低賃金に対して、資金確保が難しい企業に対して支援する申請枠です。
通常枠の条件を満たしており、最低賃金付近の雇用率が一定以上なら申請できます。
最低賃金付近の雇用率が一定以上とは?
より正確には、最低賃金からプラス30円以下の給料で雇っている従業員が10%以上いることが条件です。
対象期間は2021年10 月~2022年8月の間となります。この期間のうち3ヶ月以上、上記の給与水準が続いている必要があります。
グリーン成長枠
研究開発、技術開発、人材育成などを行いながら、「グリーン成長戦略」に関する取り組みを行っている企業を支援する枠です。
通常枠の条件を満たした状態で、以下3つの条件を満たしている必要があります。
- 3~5年で付加価値額を5.0%以上増やす計画を立てる。
- グリーン成長戦略「実行計画」14分野へ取り組む
グリーン成長戦略「実行計画」14分野とは?
グリーン成長戦略の14分野とは、再生可能エネルギーや環境保全などに関連する研究・開発分野です。
グリーン成長枠に申請するためには、14分野に取り組み、2年以上の研究開発、技術開発、人材教育などを実施する計画を立てる必要があります。
グリーン成長枠なら2回目の交付も可能
事業再構築補助金は、すでに採択・交付決定を受けたことのある企業は基本的に申請できません。しかし、グリーン成長枠に限っては、次の要件を満たしている場合2回目の申請、交付が可能です。
- 以前申請が通った補助事業とは別の事業内容で申請する
- 新たな事業計画に取り組む資金力や体制が整っている
- 採択された事業を辞退したことがない
緊急対策枠
第7回公募から新設された事業類型で、原油価格高騰の影響により、売上が減少した企業に対する補助金です。
原油価格高騰前:2019年~2021年
原油価格高騰後:2022年1月以降
指定期間:連録6か月の内、いずれかの3か月間
原油高による打撃を受けた企業は少なくありません。様々な業界で活用可能なため、是非狙っていきたい申請枠です。
第9回で狙うべき特別枠
第9回公募で狙いたい申請枠は、最低賃金枠と緊急対策枠です。これらは、今回も優遇採択される可能性が高いことを予想します。
過去の通常枠と特別枠の採択率の違いは以下の通りです。
最低賃金枠については、通常枠よりも2倍以上高い採択率です。
条件が一致するならば、是非狙っていきましょう。
申請までの手順
申請は3のフェーズに分かれます。事前準備、申請書類の用意、そして手続きへと進みます。
申請前の事前準備
【申請するためのアカウントIDを取得】
GビズIDと呼ばれるアカウントの取得が必要になります。
この取得には、早くても7~10日ほどかかります。最長1か月ほどかかるケースもあるので、注意が必要です。
まだまだ時間があるとは思わずに、早めに動いて取得してしまいましょう。
【意識共有】
企業経営者様の描く未来のビジョンを共有しましょう。
なぜ補助金を活用して、新しい事業を実施したいのかを明確にします。
経営者様の意欲は申請に向けての大きな原動力となります。
申請に必要な書類の準備
申請には決まった書類と事業計画書が必要になります。
書類関連
以下書類は、事前に用意して頂けるようにすると、打ち合わせが円滑になります。
- 決算書
- 現事業のパンフレット等
- 従業員の情報
- 売上高の資料
- 導入予定の設備や機材の見積書
申請の条件を満たしていなければ先に進めません。
そのため、可能な限り早く判断する必要があります。そして、最適な申請枠を検討しましょう。
事業計画書
事業計画書の策定では、企業としての強みを活かし弱みを克服する内容を意識し、実現性のある事業計画を作り上げることに注力しましょう。
事業計画書を作ることが申請前の最大の壁であり、挫折するポイントです。乗り越えるためのコツはこちらの記事を是非参考にして下さい。
申請手続
取得したアカウントIDでこちらからログインし、電子申請マニュアルに沿って申請手続を進めましょう。
申請をサポートする側として、
- 書類不備がないか
- ファイルの破損はないか
念入りなチェックが必要です。
電子申請時によくある不備はこちらにもまとめられていますので、一度目を通しておきましょう。
書類不備による不採択は1割ほど発生しているようです。
要注意ですね!
まとめ
今回の記事では、事業再構築補助金の申請要件について解説しました。
- 通常枠
- 大規模賃金引上枠
- 回復・再生応援枠
- 最低賃金枠
- グリーン成長枠
- 原油価格・物価高騰等緊急対策枠(緊急対策枠)
第9回公募では、以上の事業類型が設けられており、それぞれの条件を満たすことで申請可能となります。採択率から分析すると、狙うべき類型は特別枠である最低賃金枠か緊急対策枠がねらい目と予想します。
通常枠で不採択が続いている方も、是非積極的に狙ってみてはいかがでしょうか?