「海外在住だけど、コンサルタントとして日本の顧客と仕事したいと思っている。この場合日本で開業届や確定申告は必要なのかな?」
そこで今回は、海外在住でコンサルタント起業するときの、日本での開業届や確定申告の必要性について説明していきます。
他にも海外にいながら日本で会社設立という内容もお伝えしています。ぜひ参考にしてください。
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海外在住で日本顧客と仕事→開業届や確定申告は必要?
結論からお伝えすると、個人事業主(コンサルタント)として、インターネットで完結する仕事であれば、日本での開業届けや確定申告は必要ありません。
反対にインターネットで完結しない場合、日本の納税義務が発生する可能性があります。これは日本の国税庁による【非居住者の課税】として決められています。
補足:非居住者とは?
日本における非居住者とは、日本における居住期間が1年未満、または生活の中心が海外にある人のこと。
以下、国税庁の引用文です。
(1) 恒久的施設帰属所得、国内にある資産の運用又は保有により生ずる所得、国内にある資産の譲渡により生ずる所得
(2) 組合契約等に基づいて恒久的施設を通じて行う事業から生ずる利益で、その組合契約に基づいて配分を受けるもののうち一定のもの
(3) 国内にある土地、土地の上に存する権利、建物及び建物の附属設備又は構築物の譲渡による対価(4) 国内で行う人的役務の提供を事業とする者の、その人的役務の提供に係る対価
例えば、映画俳優、音楽家等の芸能人、職業運動家、弁護士、公認会計士等の自由職業者又は科学技術、経営管理等の専門的知識や技能を持つ人の役務を提供したことによる対価がこれに当たります。(5) 国内にある不動産や不動産の上に存する権利等の貸付けにより受け取る対価
(6) 日本の国債、地方債、内国法人の発行した社債の利子、外国法人が発行する債券の利子のうち恒久的施設を通じて行う事業に係るもの、国内の営業所に預けられた預貯金の利子等
(7) 内国法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配等
(8) 国内で業務を行う者に貸し付けた貸付金の利子で国内業務に係るもの
(9) 国内で業務を行う者から受ける工業所有権等の使用料、又はその譲渡の対価、著作権の使用料又はその譲渡の対価、機械装置等の使用料で国内業務に係るもの
(10) 給与、賞与、人的役務の提供に対する報酬のうち国内において行う勤務、人的役務の提供に基因するもの、公的年金、退職手当等のうち居住者期間に行った勤務等に基因するもの
(11) 国内で行う事業の広告宣伝のための賞金品
(12) 国内にある営業所等を通じて締結した保険契約等に基づく年金等
(13) 国内にある営業所等が受け入れた定期積金の給付補てん金等
(14) 国内において事業を行う者に対する出資につき、匿名組合契約等に基づく利益の分配
(15) その他の国内源泉所得
引用元:国税庁No.2878 国内源泉所得の範囲(平成29年分以降)
例えば、国内において行う業務又は国内にある資産に関し受ける保険金、補償金又は損害賠償金に係る所得がこれに当たります。
かなりわかりづらい文面ですが、海外在住の個人事業主(コンサルタント)の場合で重要なのは次の二つです。
- 引用文 (1) 恒久的施設帰属所得
- 引用文(4)国内で行う人的役務の提供を事業とする者の対価
それぞれ解説していきます。
恒久的施設帰属所得がある場合、日本で納税が必要
恒久的施設帰属所得とは、海外の事業者でも、日本に拠点となる専用オフィスなどがある場合、税金が課せられる制度のことです。
事例:海外から日本への輸出(個人物販)
海外から個人で日本に向けて物を輸出していた、とある個人業者がいました。ようはインターネットでの個人物販ビジネスです。
そして、日本でオフィスを構えてそこでアルバイトの人に仕分けなどさせていたことから、後に国内納税を課せられた、という事例です。
【日本でオフィスを構えて、アルバイトに仕分けさせて】というのが、まさに 恒久的施設帰属所得ですね。
これがオフィスを構えずにお客さんのもとへ直接物販をおこなっていれば、 恒久的施設帰属所得にはならないため、日本への納税義務はないということです。
国内で行う人的役務の提供も、納税の可能性
人的役務の提供とは、人の手によるサービス提供のことです。
- 経営管理等の専門的知識や技能を持つ人(コンサルタントも)
- 弁護士などの士業
- 映画俳優、など
こういったサービス業も、日本国内でおこなった場合、納税となる可能性があります。
可能性というのは、これは両国間で結ばれている条約(租税条約)で、対応が変わる可能性があるためです。
租税条約と日本国内の納税について
日本の法律では、国内で仕事した場合、日本国内に納税を原則としていますが、それよりも租税条約が優先されます。
租税条約で「拠点をもっていなければ納税義務はない」とされている場合、非居住者が日本での長期滞在できる家やオフィスをもっていない場合、納税の義務はなくなります。
ということで、冒頭でお伝えした、インターネット内だけで完結(日本にオフィスがない)する場合は、日本に納税する義務はありません。
その場合、開業届や確定申告関連が必要な場合は在住している国のルールに従って、となります。
反対にインターネット内で完結しない場合、日本への納税になる可能性があります。(日本国内に拠点があり、さらに国内で人的役務などの仕事をおこなったり)
日本で確定申告が必要になった場合の方法
日本での確定申告が必要になった場合、おこなう方法としては次の2つです。
海外在住者の確定申告方法
- 帰国して自分で確定申告する
- 代理人に納税してもらう
帰国して自分で確定申告する
手間ではありますが、確実な方法です。とはいえ、確定申告のためだけに帰国というのもなんですので、休暇などで帰国しつつ行うのがおすすめかと思います。
代理人に納税してもらう
代理人を選定して、その人に代わりに確定申告してもらうことも可能です。
- 家族や友人
- 税理士
- 籍のある会社法人
といった選択肢があります。
納税代理人選定の注意点・関係書類の提出方法
事前に【所得税の納税管理人の届出書】を、非居住者本人が所轄の税務署に提出しなければいけません。つまり出国前か、帰国して提出する必要があります。
提出方法自体は難しくありません。
- 所得税・消費税の納税管理人の届出手続ページから届出書をダウンロード後、記入
- 納税所轄の税務署に書類を提出する(窓口・郵送・時間外収受箱)
※全国の税務署の所在地は、次のリンク先から確認できます。
国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」のページから検索できます。
日本で開業届を出す場合は?
基本的には海外からの確定申告のやり方と同様(帰国・納税代理人)です。詳しくは相談内容にもよりますので税務署にお問い合わせください。
各都道府県の税務署情報は以下の国税庁サイトにて調べることができます。
補足:海外在住でも日本で会社を作れる
補足情報になりますが、今後事業拡大などで「日本に会社を設立したい」、という場合について。
取締役が海外在住のままでも、日本国内に会社は作れます。※以前は禁止でしたが、2015年以降から可能になりました。
※参考:法務省 外国人・海外居住者の方の商業・法人登記の手続について
海外にいながらでも会社を作れるのは嬉しいことですね。会社を設立するには、いくつかの書類が必要になります。主には次の3つです。
非居住者の会社設立書類
- 資本金の払込証明書
- 署名証明書またはサイン証明書
- 外国語で作成された添付書面の翻訳
書類1:資本金の払込証明書
会社の資本金が払い込まれたかを証明するための書類です。この証明書類の提出は、 会社法第34条第1項 により定められています。
- 払込証明書を作成する
- 通帳コピー(表紙の表・表紙の裏・振込内容が記載されているページ)
これらを綴じる(重ね合わせて紐などでまとめる)。以上です。
書類2:署名証明書またはサイン証明書
署名証明書は会社設立時に必要な印鑑証明書の代わりに発行される書類です。
※非居住者の場合、居住者と異なり住民登録がされていないため、 印鑑証明書の取得が不可能。内容は、申請者の署名(及び拇印)が確かに領事の面前でなされたことを証明するものです。
書類3:外国語で作成された添付書面の翻訳
設立登記申請時に外国語の書面を添付する際は、日本語の訳文をつけなければなりません。場合によっては一部翻訳を省略できるときもあります。
これらの書類を用意することで、日本での会社設立が可能になります。
よければ、下記の記事もご参考に一読ください。コンサルタントの案件獲得方法についてです。
おまけ情報:コンサルタントの案件獲得方法について
開業届の内容とは関係ありませんが、コンサルタントとしての独立・起業にお役立てください。
個人事業主にとって大切な、仕事の獲得方法(営業・集客など)について解説しています。
まとめ
今日の記事をまとめると次のとおりです。
- 海外在住で日本顧客にコンサルタント業を行う場合、インターネット内で完了するなら日本での開業届、確定申告は必要ない
- 恒久的施設帰属所得がある場合、日本での納税が必要(日本でオフィスや賃貸部屋など拠点を有する場合)
- 国内で行う人的役務(サービス業)も納税の可能性※租税条約により対応も変わる
- もし日本国内で納税する場合、自分で帰国して行うか、代理人に対応してもらう
- 取締役が海外に在住しながらでも、日本に会社を設立できる
以上ここまでお読みいただきありがとうございました。