今泉武史
組織のイメージアップにパーソナルブランディング戦略を導入したいと言われた場合、どのような方法で実施していくかを紹介します。
最初に、ふたつの似た言葉を比べて意味の違いをおさえておきましょう。
パーソナルブランディング:企業などに属する個人が組織のイメージアップのためにおこなう
セルフブランディング:組織に属さない個人が自らのイメージアップのためにおこなう
▼「セルフブランディング」について知りたい方はこちらの記事をどうぞ!
パーソナルブランディングの方法|3ステップまとめ
パーソナルブランディングの方法を3ステップにまとめました。
それぞれのステップでやるべきことが沢山あり「"簡単"3ステップ!」とは言い難い内容ですが、そもそもブランディングが大変でないわけがありません。準備をしっかりすることで明暗が分かれます。ただし、方法を入手すればあとは実行あるのみ!手探りの状態よりもグッとハードルは下がります。
企業でパーソナルブランディングをするのなら、まずは3ステップの大枠のみを伝えるのもひとつの方法です。全体像がみえると取り組みやすいでしょう。
STEP1.まずは現状の把握
多方面から、自らの強みを分析しましょう。パーソナルブランディングでは強みをしっかりと伝えていくことになるので、ここで分析がしっかりできていないと、次につながっていきません。いうなれば地盤の段階です。
- パーソナルブランディングの必要性を個人が理解しているか
- 業績やビジネスの現状
- パーソナルブランディングの目的
- セルフイメージと客観的イメージのギャップを認識する
- 強みの把握(個人・組織・商品)
- ライバルのリサーチ
自分自身や組織、商品(もしくはサービス)の強みをできるだけ沢山挙げ分析します。STEP.2でどの強みを押し出すか、ブランドイメージをどのようにしていくかについて考えるので、STEP.1では強みの善悪などは決めつけずとにかく現状を全て列挙しましょう。
顧客の理解が得られない場合も
自分自身のことはわかっている、と顧客から訴えがあるかもしれません。一見遠回りに思えるかもしれませんが、身近な関係性ですら上手く伝えられない強みでは、今後大勢の人に伝え広めていくことは困難です。
まずはコンサルタントに顧客の強みを伝えてもらう、という形式から始めブラッシュアップしていきましょう。
パーソナルブランディングの必要性については後述しますので、しっかり考えていきましょう。
ライバルのリサーチ
パーソナルブランディングという言葉から、自社・自分と向き合うことに気をとられがちで、ライバルのリサーチは盲点となりやすいので注意しましょう。
自分の強みがライバルと被っている場合、その1点だけの強みでは上手くパーソナルブランディングできない可能性が高いです。複数の強みを組み合わせるか、他の強みを活かすようにシフトチェンジする方法があります。
STEP2.ブランドをつくりあげる
ブランドをつくりあげるのには、何が必要だと思いますか?
ブランドの世界観をつくる要素例
- キャッチコピーを決める
- 見せ方、話し方、伝え方を決める
- テーマカラー、スタイル、香り、服装
- 理想や目標の設定
- ターゲット層を決める
一例を挙げましたが、ブランドイメージには様々な要素が絡みます。消費者にどんなイメージをもってもらいたいのか、しっかり文章化するとより良いですよ。迷ったときに見れば、初心を思い起こせます。
STEP.1で挙げた現状と、理想とする世界観を組み合わせて考えましょう。
ターゲット層を決める
ブランドイメージの世界観をつくるには、理想の消費者層も考えておく必要があります。
美鈴
なんだか意外ですね?『お客様は神様だ!』という言葉もあるくらいですし…
消費者を選り好みして良いのでしょうか?
全人類をターゲットにしたブランディングは実質不可能です。
商品を実際に使って欲しい個人を思い描いてこそ、効果的なパーソナルブランディングが可能になります。
今泉武史
どのような人に自分を知ってほしいのか、どのようなイメージをつけたいのかがわからなければブランドをつくりあげることは困難です。人の感じ方は千差万別。ターゲット層に刺さる方法でブランディングしなければなりません。
また、STEP.3でブランドを広めていくときに、自分個人の力だけでは広がっていきません。"世界"なんて、自分ひとりでは作れませんよね。自分の世界観に共感してくれる消費者、興味をもってくれる消費者を良い意味で巻き込んでブランドの世界観を実現していきましょう。
STEP3.ブランドを広めていく
自分のなかでブランドイメージがかたまったら、そこからやっとブランドを広めていく段階に入ります。ブランドを広めるため、発信するときに注意したいのは以下の項目です。
・専門的な内容を発信する
・真摯なコミュニケーションを心がける
専門的な内容を発信する
ターゲット層の役に立つ情報を発信しましょう。強みに関連する専門的な内容がベストです。
ポイント
専門的な内容は時に、味気ない印象を与えることがあります。消費者の共感を得ることもパーソナルブランディングの重要な要素です。
事実のみを発信するのではなく、物語形式での情報発信もおすすめです。
商品を通した『理想の世界』を語ることも効果的です。
たとえばスーパーマーケットであれば「地域の方々の生活に寄り添い、安全な暮らしに貢献したい」など、消費者にとっても理想的な世界を語りかけます。その世界を実現させるために努力する姿を見せれば、作り物ではない、生きた物語が発信できるでしょう。
真摯なコミュニケーションを心がける
一方的な情報発信ではなく、消費者とのコミュニケーションをとる意識をもちましょう。興味をもってもらうだけでなく、親密性を高めことができます。
ただし、親密性があるだけでは成約に繋がりません。"憧れ"ともいえるような、商品や個人に"良い"と思われる要素があるべきです。コミュニケーションは真摯な対応を心がけ「この人からであれば購入したい!」と思ってもらいましょう。
企業でパーソナルブランディングする場合|必要な配慮
美鈴
パーソナルブランディングは、大変骨が折れるのですね!
その通りです。そして、組織でパーソナルブランディングする場合、注意すべきは手間や方法だけではありません。
今泉武史
骨の折れる作業をする社員に対して、必要な配慮についても紹介しておきます。法人の代表者や社長が自らパーソナルブランディングする場合には必要ない場合もあるでしょうが、社員がパーソナルブランディングをするのであれば参考にしてくださいね。
パーソナルブランディングの前に|拒否権を是認する
パーソナルブランディングと切っても切り離せないインターネット。SNSが一般的となったからといって、皆がそうではありません。
インターネット上に顔を出すことに不安や嫌悪を感じる社員もいるでしょう。会社の一方的な人事で強要することは絶対にせず、配慮を怠らないでください。
パーソナルブランディングは、情報を発信する側と消費者との間で相互にコミュニケーションする機会が多くあります。社内でディスコミュニケーションが発生している時点で一度思い直した方が良いかもしれません。
社内で有志をつのる
拒否したからといって不利益を被ることがない環境を整える
社内での立場が悪くなることや、人事に影響がないことははっきりと伝えましょう。伝えるだけでなく、内実伴っていることは大前提です。
もちろん、パーソナルブランディングを成功させた社員が、社内で立場があがることもあるでしょう。しかし、これはパーソナルブランディングを拒否した社員の昇級可能性と矛盾するものではありません。
情報を発信する個人ひとりに任せっきりにしない
今泉武史
「セルフブランディング」と比べたとき、「パーソナルブランディング」のメリットは何だと思いますか?
セルフブランディングは個人でおこなうため、ほとんど全てのことを1人でこなす必要があります。その一方で、パーソナルブランディングでは組織内の人間で助け合うことが可能です。
例えば…情報のダブルチェック
組織として運営するからこそ、複数人で内容をチェックしてから情報を発信することができます。
現代、何かしら情報を発信するときにはインターネットを用いるのが手軽です。しかし、怖いのは炎上。
特に個性を出してブランディングする場合、炎上すると個人の人格批判にまで及びかねません。もちろん、組織にとっても大きなダメージとなります。
社内でダブルチェックの体制を整えることができれば、不用意な情報発信のリスクを下げることができます。企業としては信頼を守ることができますし、社員の安全も守れます。
強みを発信する当事者だけでなく、裏方として個人をサポートする役割を用意するのも良いでしょう。
情報発信についての研修を開催する
ダブルチェックも大切ですが、発信する個人の学びの場も必要です。個人の裁量に任せたままになるのは良くありません。組織のイメージアップのために個人の魅力を使用しているのですから、組織としてのバックアップもぬかりなくしたいところですね。
社内研修を実施予定で、余裕があるのなら「今はパーソナルブランディングをしたくない」社員も研修の参加だけ認めるのもひとつの方法です。
たとえば、自分の強みについてフィードバックをもらう研修であれば、参加するうちに気が変わることも考えられます。「興味はあるけれど、自信のない自分がパーソナルブランディングなんて…」と思っている人もいるかもしれません。研修で強みと向き合えば良い方へ向かうこともあるでしょう。
菅原
心の底では興味をもっている社員をやる気にさせることができれば企業として理想的ともいえそうですね。
そのような仕組みの提案ができ、組織にとって良い結果に繋がれば、コンサルタント冥利につきるというものです。
今泉武史
パーソナルブランディングの必要性
ところで、パーソナルブランディングの必要性はあるのでしょうか?手間も時間もかかり、社員にも配慮が必要…そんななかでもやるべきことなのでしょうか?
このような時は多くの場合、メリットとデメリットで考えられます。ここでは更に、消費者にとっての利益についても考えてみましょう。
パーソナルブランディングのメリット
組織としてのメリットとして、以下のことが挙げられます。
消費者からの信頼を得ることができる
競合との差別化ができる
価格競争をしなくて良い
人脈も広がり好循環がうまれる
リピート率が向上する
個人に対する信頼を獲得することは、組織の利益に直結します。何かあったとき、「あの会社の○○さんに相談してみよう」と消費者の頭にパッと浮かぶような関係を築けるためです。
消費者との接点が多くなることは、組織にとって大きなメリットですよね。そして消費者の頭に浮かぶようになった人材は、そのコミュニティを通し人脈を広げることが可能です。
更に成約に繋がる、という好循環がうまれます。また、差別化の要素が個人であるため、高いリピート率も見込めるでしょう。
▼価格競争についてはYouTubeでもお伝えしています。
社員の立場でもメリットはあるか?
では社員の立場から見て、パーソナルブランディングすることにメリットはあるのでしょうか?
今泉武史
もちろんあります!
パーソナルブランディングに携わることを迷っている社員は、デメリットの方ばかりに目がいっている可能性もあるので、必要に応じてメリットも伝えましょう。
自分の強みを発見しやすい
自信がつく
自分自身の行動指針となる
良いところを更に伸ばせる
社の商品・サービスや、社内での実績を"強み"としてカウントできるため、ゼロベースで強みを考えるより見つけやすいでしょう。「自分なんて何も強みはない…」と思い込んでいる社員であっても、「○○(商品)のプロ」として強みを押し出しやすいのです。
まずは、これを押し出しパーソナルブランディングしていくのも良いでしょう。強みを押し出すことに慣れていけば、自信がついて自分自身の強みについても認められるようになる可能性が高いです。
また、がむしゃらにその場しのぎで仕事をしているような社員にとって、強みは行動指針となりえます。ふと選択に迷ったときに強みを活かす選択をしやすくなるので、どんどん強みを伸ばしていけるのです。
パーソナルブランディングのデメリット
一方で、デメリットには以下のようなことが挙げられます。組織として、デメリットを事前に認知し対応を考えておきたいところです。
信頼を獲得した社員が退職するリスク
信頼を失ってしまったときのダメージが大きい
『パーソナルブランディング』自体に悪いイメージがあることも
信頼を得た社員が組織の強みとなるのは喜ばしいことですが、その社員がずっと組織に属する保証はありません。本人の希望にかかわらず、様々な変化がおこる可能性があるのです。
そのため、たったひとりをブランディングするのではなく、複数人たてることをおすすめします。各々がブランディングすることは、全体のパイを大きくすることに繋がります。
このことは、美容室を想像するとわかりやすいかもしれません。美容室には『指名』がありますよね。各々に指名客がつけばお店全体の客数も増えるでしょう。
また、パーソナルブランディング自体に悪いイメージをもっている人もいます。そのような人は、商品やサービスを過剰に魅力的にみせる手法だと思っていることが多いようです。
『過剰に』というところがミソで、実際のパーソナルブランディングは本来の魅力や価値を正しく、そして効果的に発信する手法です。しかし本来の『パーソナルブランディング』の枠を超え、売り込みが過剰となっているケースがあるのも事実でしょう。
対応策としては、以下3つのポイントに注意を払ってください。
- 現状把握の自己解析をしっかりおこなう
- ウソやはったりの強みを売り込むのではなく、今ある強みを活かす
- 強みを伸ばしていこうと努力し、その姿も発信する
パーソナルブランディングは消費者のためになるのか?
パーソナルブランディングに対し、悪いイメージをもつ消費者が存在することをお伝えしました。そこで、パーソナルブランディングは消費者のためになる側面はあるのか考えてみましょう。
今後のビジネスは「消費者主義」が大前提なので、正直、消費者の立場でメリットがないのならやる意味がありませんよね。大きく2つが挙げられます。
数ある中から、自分に合った商品・サービスを選択できる
安心感や誇りがもてる
現代では同じような商品・サービスがたくさんあります。消費者は、その中から自分に合うものを選択したいと思っています。せっかく検索して情報を集めても、何がウリで強みなのか、いまいちピンと来なければ消費者はがっかりしてしまいます。
また、顔が見えるというのは消費者に大きな安心感をもたらします。それが専門的分野で優秀・有名な人であり、強いつながりが作れていると、心の中で誇りや優越感がうまれる可能性さえあるのです。
まとめ
パーソナルブランディングの方法を3ステップにまとめご紹介しました。
それぞれのステップで考えるべき・やるべき項目が多いので簡単ではありませんが、メリットも大きいのは魅力的ですね。
パーソナルブランディングを上手く組織のイメージアップにつなげ、必要としてくれる消費者に商品・サービスを届けられるような仕組みができればコンサルタントとしても大成功です。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。