コンサルタントとして仕事を獲得する場合、契約書の取り交わしは避けて通れません。
そういえば、契約書はどうやって作るんだろう?
しっかりと契約を結んでおかなければ、重大なトラブルに発展し、大きな損失を被る可能性があります。
トラブルを防ぐためにも契約書は重要ですよ!
そうならないためにも、この記事でしっかりと契約書についてマスターしていただき、気持ちの良い取引ができるように準備をしてください。
Table of Contents
コンサルタントが作るべき契約書と実際の構成
コンサルタントが実際に作成すべき契約書は、どのようなものでしょうか。
まずは、その全容をご覧頂き、完成した契約書のイメージをしていきましょう。
契約書の種類を決める
コンサルタントがクライアントと締結すべき契約書類には、主に「請負契約」と「準委任契約書」があります。
まずはどちらの契約書を作成すべきかを考えてみましょう。
これは、コンサルティングによって提供されるサービスに「成果物」が発生する場合は「請負契約」など、契約内容を選ぶと理解しやすいです。
契約書の種類については、下記の記事が参考になります。
具体的な契約書の構成
実際の契約書における構成を見ていきましょう。
一般的に契約書は以下のような順番になっております。
- タイトル
- 前文
- 本文(一般条項と主要条項)
- 後文
- 契約締結日記入欄
- 署名(記名押印)欄
契約書は結構シンプルな構成なんですね!
それぞれの項目について詳しく解説していきます。
1.タイトル
どんな契約書であるか、タイトルを確認することですぐに理解できる内容にしてください。
例えば、以下の様なタイトルが挙げられます。
- 業務委託契約書
- 秘密保持契約書
- 取引基本契約書
コンサルタントが作成する契約書については、「業務委託契約書」がまずは挙げられます。
タイトルを見ただけで、「これは〇〇の契約書だな」と分かるようにしましょう
2.前文
「甲」や「乙」を用いて、契約の当事者(クライアントとコンサルタント)の特定と、契約の目的を記載した文章の事です。
分かりやすく下記に例をあげます。
前文例
株式会社〇〇(以下「甲」という)と〇〇株式会社(以下「乙」という)は、XXのため、◇◇契約を締結する。
契約書でよく見る文章ですね!
3.本文(一般条項と主要条項)
本文は契約そのものを表します。
取引の具体的な内容や権利についてなど、「条項」について記載する部分です。
(「条項」については、この記事の見出し「具体的な契約書内容(本文)について」をご参照ください。)
4.後文
作成した契約書の部数、保管についてなどを明確にするため必要な記載です。
後文例
上記の契約について成立を証するため、本契約書を2通作成し、「甲」「乙」それぞれが記名・押印の上、各1通を保有する
契約内容をわかりやすくするためにも、お互いきっちり契約書を保管しましょうということですね
5.契約締結日記入欄
当事者が署名、記名押印した時を契約締結日とします。
6.記名押印もしくは署名捺印欄
「記名押印(きめいおういん)」の欄を契約書の最後に設けるのが一般的です。
「記名押印」は会社名などを、パソコンで打ち込んだもので印刷したり、社名のスタンプを押したあと、社印などを押す事をいいます。
ちなみに自署(サイン)の場合は「署名捺印(しょめいなついん)」と言います。
ここまで、契約書の大まかな構成を解説してきました。
次は契約書の具体的な内容などについてお話していきますね!
契約書の種類や必要項目について
契約書と言っても、世の中にはさまざまなものが存在します。
この記事では、特にコンサルタントに適切な契約書について、じっくりと解説していきます。
ここまで解説してきた契約書の構成に加え、以下に解説する内容を参考にしていただけると、実際の契約書案を作成できます。
ではさっそくみていきましょう!
具体的な契約書内容(本文)について
コンサルタントが作るべき契約書には、例えば以下の内容がしっかりと盛り込まれていることが重要です。(順番は場合によって入れ替わりがあります)
- 第一条「契約の目的」
- 第二条「コンサルティング業務の範囲」
- 第三条「コンサルティング業務の遂行方法」
- 第四条「再委託について」
- 第五条「契約期間について」
- 第六条「報酬と報酬の支払時期について」
- 第七条「知的財産の帰属」
- 第八条「禁止事項」
- 第九条「秘密保持」
- 第十条「損害賠償」
- 第十一条「契約の解除」
- 第十二条「反社会的勢力の排除」
- 第十三条「合意管轄」
ここはしっかり作りこむ必要がありそうですね。頑張りましょう!
それぞれを詳しく解説していきます。
第一条「契約の目的」
受託者であるコンサルタントと、依頼主であるクライアントの立場が分かるように明記する必要があります。
下記の様なものはよく見かけますね
よくある記載例
甲(クライアント)は乙(コンサルタント)に対するコンサルティング業務を委託し、乙はこれを受託する。
しっかりと契約書の目的を記載するという意味では、契約書本文の一番最初にもってくることが妥当でしょう。
第二条「コンサルティング業務の範囲」
クライアントへのコンサルティングの内容について、その範囲を明確にすることが目的の文章です。
例えば「甲(クライアント)の新規事業開発に関する施策や実行への助言」など、コンサルタントとして実施しようとしている内容を明記します。
また、業務量と報酬のバランスを考えて、下記の様な事項も明記しておくと安心です。
- コンサルティング業務に関わる時間を明記する(月の上限時間など)
- 明確な業務範囲の線引きをしたうえで、別途料金の設定が必要な場合も明記する
第三条「コンサルティング業務の遂行方法」
クライアントと契約後、実際にコンサルタントとして業務をするにあたり、どのようにコミュニケーションを取るのかを伝える文章です。
2023年現在では、リモートワークなど新しい働き方が珍しくなくなってきました。
このような働き方の変化によって、コンサルティング業務を遂行するにあたり「ウェブ会議を中心にしてくれれば訪問は不要」など、コミュニケーションの方法がかなり柔軟になってきています。
そこで業務の遂行に関しては、「リモートで完結させる」のか「月に1回は対面の打ち合わせが必要なのか」などについて、明記します。
この時代に合った働き方と照らし合わせてみるのも良いです
第四条「再委託について」
再委託はクライアントから依頼されたことについて、その依頼内容の一部を、コンサルタントが外部へさらにアウトソースすることを指します。
アウトソースとは
例えば、コンサルタントの専門領域以外やメインではない業務に対して、他の専門コンサルタントや外部業者に仕事を委託すること。
大規模で複雑な情報システムの入れ替えや新規導入などの場合に、一部は専門的な開発になることがあると仮定しましょう。
その専門的な開発に関しては、コンサルタントから別の専門コンサルタントや、外部の開発業者へ委託することがあります。
この再委託の内容を盛り込むことによって、外部との連携がさらに取れるようになります。
独立系の独りコンサルタントだとできる範囲も限られてきますしね
一方で、情報漏えいなどの観点から、クライアントが再委託を望まない場合があります。
この点については、仕事の内容やクライアントとの詳細な打ち合わせを通して、落としどころを見つける必要があります。
第五条「契約期間について」
契約期間については、クライアントから依頼されたプロジェクトが終わるまで、もしくは成果物が納品されるまでという事になります。
しかしながら、案件の終了期間が不明確になることもあるので、しっかりと「ここからここまで」という期間を決める必要があります。
自動更新などの設定も可能ですが、必ず契約終了のリードタイムの設定をしましょう
リードタイムとは
プロジェクトの始まりから終わりまでの工程日数のこと。
第六条「報酬と報酬の支払時期について」
報酬の支払時期に関しては、契約の種類によって書き方が変わります。
例えば、以下の様な例があります。
- 「請負契約」の場合:「成果物」をクライアントに「納品した後」を支払時期として設定する
- 「準委任契約」の場合:「成果物」というよりも、クライアントに助言をしたり、日々のプロジェクト遂行への助力となるので、「毎月一定額」の支払いと設定する
報酬については特に重要ですよね!間違わないようにしましょう!
第七条「知的財産の帰属」
この条項は、コンサルタントの成果物やプロジェクトへの助言、もしくは独自の手法を使ってコンサルティングをした場合、それらの知的財産権を創作者本人(コンサルタント)に帰属させるためのものです。
例えば、コンサルタントが対象のクライアントにのみ提出した成果物を、クライアントがわが物のように他者に譲渡することを防ぐために必要です。
第八条「禁止事項」
クライアントからみて、契約しているコンサルタントが競合他社にも同じような提案をしていると仮定してみましょう。
するとプロジェクトの中で、そのコンサルタントに共有された情報などが競合にも漏えいする可能性があります。
こういった事態を避けるため「絶対やってはいけないこと(やらないこと)」を盛り込んでおくとクライアントにも安心してもらえるでしょう。
第九条「秘密保持」
さらにクライアントに安心をしてもうらうためにも、秘密保持の事項を契約書に掲載することが重要です。
クライアントのプロジェクトについて外部に漏れるようなことは絶対にあってはなりませんので、しっかりと条項に盛り込みましょう。
また先に出た「再委託」の項目でも取り上げた通り、外部への委託時にもこの秘密保持を守らなければいけないのは当然のことです。
第十条「損害賠償」
相手に損害を与えてしまった、与えられてしまった場合に備えて、損害賠償についても明記をしておきましょう。
損害賠償には、その「範囲」がありますので、想定する状況に応じて設定しましょう。
第十一条「契約の解除」
この条項もクライアントへの安心感を高めるために重要です。
設定した契約期間内に、コンサルタントが万が一クライアントにとって不利になるような違反などがあった場合に、契約を解除できるようにしておく必要があります。
また、クライアントからの報酬支払遅延や、他の契約内容に違反した場合にも有効です。
第十二条「反社会的勢力の排除」
こちらの条項は、言い換えると、「暴力団排除条項」になります。
内容としてはそのままで、契約するクライアントが反社会的勢力ではない事、暴力団でははないこと(または能力的な要求などをしない)を保証することになります。
第十三条「合意管轄」
この条項は仮にクライアントと裁判になってしまった場合に関係するものです。
裁判になった場合、「どの裁判所で行うのか」などを定めておく必要があるためです。
その他盛り込むべき内容について
その他にも、入れ込む条項によってさらに契約書を充実させることができます。
ここは必要に応じて追加するか、クライアントとの打ち合わせのなかで条項を肉付けしていくと良いでしょう。
クライアントによって、カスタマイズするのがおすすめです!
「条」「項」「号」の構成
条項に関しては、それぞれの文章の中で、「条」「項」「号」の3つで構成されています。
それぞれは以下のようにとてもシンプルです。
条
第一条「契約の目的」などのタイトル
項
「条」に対する説明
号
「項」に対するさらなる詳細説明
条項によっては、内容を細かく設定する必要もありますので、この構成を覚えておきましょう。
その他の準備や対策について
契約書を作成して提出したからといって、クライアントにすんなりOKをもらえないこともあります。
クライアントにとって不利な条件などがあれば、訂正の依頼が来る可能性があります。
双方でどこまでなら譲歩できるのかなど話し合って、きちんと落としどころを決めることも重要です
また、ゼロから契約書を作成することは、詳細に至るまで、細かくこだわって作成できます。
一方で、大変な労力を伴うことも想定されますので、効率的に作成するための準備や対策についても解説していきます。
クライアントのひな型をもらう
クライアントも、コンサルタントとの契約だけに関わらず、さまざまな契約書のひな型を準備している場合があります。
たたき台として、コンサルタントが作成した契約書を先方に提出しつつ、クライアントにも「ひな型はありますか?」と確認をしておくことも良いでしょう。
ひな型が準備されていれば、そのひな型に沿って契約書を作りこむことが可能です。
もしくはクライアント側から、「この契約書のひな型でどうでしょう」と先に提案される場合もあります。
弁護士に確認してもらおう
完成した契約書を実際に弁護士に見せてチェックしてもらったり、入れ込むべき条項について相談をすることをお勧めします。
これを「リーガルチェック」と言います。
リーガルチェックでは、クライアントと締結しようとしている契約書について、法的な問題やおかしな点がないか確認してもらう事ができます。
リーガルチェックを依頼する場合の相場は、1件の契約書に対して、数万円~15万円くらいのようです。
印紙税について
契約の種類によっては「印紙税」がかかることがあります。
国税局の「請負に関する契約書」の説明によると、請負についての契約書は印紙税がかかる契約に該当すると言っています。(参照:国税局)
契約書作成時に必ず確認をしておきましょう。
この点に関しては、上記のリーガルチェック時に弁護士へ確認するのも良い方法です。
トラブルが発生したとき
最後に、万が一契約書についての違反や、問題が起こってしまった時はどうなるでしょうか。
まずは、落ち着いて「何が起きたのか」をしっかりと確認しましょう。
焦らずに淡々とすすめることが肝心です
相手方の違反であれば、契約書のどの条項に当たるかを確認した上で対応しましょう。
それが、「契約解除」ですむのか「損害賠償」に当たるのかなど含め、早期に弁護士に相談することをお勧めします。
まとめ
今回の記事では以下の事を解説してきました。
- 契約書の全体の構成について
- 契約書に必要な具体的な条項などの内容
- 契約書を効率的に作成するための対策や契約後のトラブルシュート
この記事を何度も繰り返し読んで頂き、いつでも使える自分専用のひな型を作成しておくと便利ですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!