独立したけれど、コンサルティングをするにあたって、それらの契約は、そもそもどんな方法で取るんだろう?とりあえず、なんとなく進めてみよう!
そう思っている方、ちょっと待ってください。契約方法を知らずにコンサルティングを進めると、リスクが高いことはご存じでしょうか?
大変なことにならないように、今回は契約種類から締結までの流れを解説していきます。
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コンサルタントが押さえておくべき契約の種類は主に2つ
大前提として、コンサルティングにおける、契約は主に2種類あります。
下記に詳しく解説していきます。
準委任契約
「準委任」については、民法第656条に下記のように定められています。
(準委任)
第六百五十六条この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
引用元G-GOV 法令検索
上記の「法律行為でない事務」とは、「法律効果を発生させない事務」という事です。
例えばお医者さんが、患者さんを診察する行為も法律行為以外の事務とされています。
つまり、「法律行為以外の仕事」をする場合に、この「準委任」の解釈が必要です。
コンサルティング(=アドバイスをする)の仕事についても、「準委任」に含まれます。
このような理由から、コンサルティングには「準委任契約」という契約方法が、まず挙げられます。
請負契約
もう一つは、「請負」です。
こちらも民法第632条で、以下のように定められています。
(請負)
第六百三十二条請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
引用元G-GOV法令検索
「準委任」と比べて、厳しめな契約になりますね。
「準委任契約」であれば、アドバイスをしたり、カウンセリング等でも契約として成立しますが、「請負契約」になると、上記の民法にもあるように、「仕事が完成すること」で報酬が支払われる契約になります。
つまり、「成果物を明確に出さないと、料金は支払われませんよ。」という事になります。
コンサルティングの契約に関することに関しては、以下の記事も参考になりますので、是非ご覧ください。
2つの契約|その他の違い
「準委任契約」と「請負契約」がコンサルティングする上で、主な契約方法という事と、目的の違いについてお伝えしました。
その他の違いはどのようなことがあるのでしょうか?
具体的には下記のようなものがあります。
報酬請求権の有無
報酬請求権については、「準委任」には無く、「請負」には有る権利です。
つまり、「準委任契約」の場合は、民法上で原則、契約に基づいている特約がない状態では、クライアントに対して請求することが出来ません。
一方で、「請負契約」であれば、成果物の対価として、クライアントに報酬を請求できることになります。
しかし、ビジネスをする以上、どちらの契約でも請求は発生しますよ!
特に「準委任契約」を締結するときには、しっかり報酬について契約に盛り込むことをお忘れなく。
契約不適合責任
「請負契約」をした場合に問われる責任です。
「請負契約」を締結して、プロジェクトを進行させた場合、例えば、最終的な成果物やクライアントの希望通りのものが納品されていることが必要です。
請負契約の性質上、必要になってくることなんですね。
もしも、クライアントの発注通りの成果物を納品できなければ、発注者(クライアント)が受注者(コンサルタント)に対して、損害賠償を請求できる可能性があります。
この契約不適合の責任については、基本的に「準委任契約」にはありません。
契約解除|中途解約について
それぞれの契約について、途中で解約する場合はどうなるでしょうか。
例えば、以下のようなことが認められています。
- 民法541条及び、542条に基づいて、クライアントもしくはコンサルタントに債務不履行があった時、契約解除が認められる
- 「準委任契約」と「請負契約」について、債務不履行による解除のほかに、中途解約(任意解除)が認められる
「準委任契約」は、コンサルタントとして、クライアントにアドバイスやコンサルティング業務が不要となった場合、解約出来ます。
いつでもクライントとコンサルタントが契約を解約できるんですね!
「請負契約」に関しては、成果物が出来上がる前であれば、クライアントが契約を中途解除できるとされています。
しかし、クライアント都合で中途解約する場合、コンサルタントに損害賠償を行う義務が発生することになります。
再委託の可否
再委託は、例えば、クライアントが発注してきた内容をコンサルタントが受け、受けた依頼を、また別の第三者に委託することです。
「準委任契約」は原則、再委任は不可ですが、「請負契約」であれば原則、再委任は自由とされています。
ここはしっかりと見極めておかないと、クライアントの信頼を失う可能性がありますね。注意です!
コンサルティング契約の例
では、実際のコンサルティング契約としてどのようなものがあるのでしょうか。
例を挙げて解説していきます。
情報システムコンサルティング契約
社内の受注発注システムや、在庫管理システムなどの新規導入や、入れ替えなどを行う際に、新たに入れ替えるシステムを熟知したコンサルタントに依頼する契約です。
実務としては、対象企業のシステム関連の支援を全面的に行います。
例として、以下のようなものがあります。
- システム導入、入れ替えのオペレーション
- クライアントの従業員へシステムの操作方法等トレーニング
- クライアントにあったソフトウェアのカスタマイズ提案
- 導入されたソフトウェアと併用できるシステムの開発
- ベンダー(システム販売会社)のコントロールサポート
M&Aコンサルティング契約
M&A(Mergers and Acquisitions)契約は企業が、他の企業を合併(Mergers)、買収(Acquisitions)する際に、どこから着手すべきか、実際にどのような手順で進めるべきか等、コンサルタントに依頼するときに結ぶ契約です。
実務として、相手企業との交渉など比較的長期にわたって支援していきます。具体的には、以下のようなものが例として挙げられます。
- 対象となる企業の絞り込み
- デューデリジェンス(対象企業の価値、与信を含めた調査)
- 合併の場合は「吸収合併」なのか「新設合併」なのかをクライアントと打ち合わせ、戦略の策定、交渉を担う
- 買収の場合は、対象企業の「株式取得」方法に関するコンサルティングや「事業譲渡」に関わるコンサルティングを担う
- M&Aを通してクライアントの利益を最大化させる
人事組織コンサルティング契約
クライアントの組織における改革のサポートや人事評価、人事制度設計に及ぶまで、人事関連の課題を解決するためのコンサルティングです。
実務の例としては以下の通りです。
- 現状分析と組織設計計画
- 人事評価制度のカスタマイズ
- 人材育成方法の構築
- 採用戦略の策定と実行
- 戦略的な組織体制の構築
上記に上げたのは一例にすぎませんが、コンサルティングの領域は広く、様々な種類が存在します。
ここからは、実際に必要な契約書の作成~契約締結までの流れを見ていきましょう。
契約書の作成から契約締結まで
契約の種類や実例がわかったところで、契約書作成に必要な項目を確認していきましょう。
契約書には、例えば以下の条項を盛り込むことが必要になります。
- 契約期間について
- 業務の内容や範囲について
- 報酬の支払方法について
- 成果物の利用について(知財的な観点)
- 秘密保持義務
- 責任制限について
- 再委託について
- 権利義務の譲渡禁止
- 契約解除について
- 反社会的勢力の排除
まずはドラフト(草案)を作り、クライアントと打ち合わせをし、早期に落としどころを見つけて契約書を完成させましょう。
ドラフトの内容を確認してもらう
必要な条項を明記し、作成したドラフトを、クライアントへ渡し、確認してもらいましょう。
クライアントがドラフトについて、改変や追記などを要望してくる可能性がありますので、順を追って丁寧に対応していきましょう。
間違いがないように、しっかりと完成させたいです。
必要に応じて、法律事務所などに、外注し、リーガルチェック*をしてもらうなど、しっかりとした契約書を作り上げることも必要です。
最終的な契約書が出来上がり、クライアントも「問題無し」という事で納得頂ければ、晴れて「契約締結」となります。
双方が、納得できる契約書の完成を目指しましょう!
*リーガルチェック;作成した契約書の内容に、法令違反になる箇所がないか前もって検証すること。
雛型をクライアントからもらう
ドラフトをコンサルタント側が最初から作成し提出して、契約書のやり取りをするのも良いです。
しかし、時間がかかりそうな場合は、クライアントが用意する契約書の雛型をもらって進めることも検討してみてください。
もしくは、クライアント側から、「この雛型を使用してください。」と依頼される場合もあります。
雛型を受け取ったら、同じくリーガルチェックなど行い、ご自身でも確認しつつ、「これなら大丈夫」と思えるところで、契約を締結してください。
契約書作成時の注意点
そもそも契約というものは、口約束でも成立してしまうものです。
これでは、何か問題があった時に、言った言わないの話となってしまい、トラブルにつながる可能性が高くなることから、契約書の作成は必須と言っても良いでしょう。
また、契約書を作成するにあたっては、以下について特に注意が必要です。
- 案件に合わせて契約書に盛り込む条項を調整する
- 契約書のドラフト(草案)は必ずクライアントと擦り合わせる
- 契約の種類によっては「印紙」が必要
コンサルティングの契約は、クライアントから依頼される内容一つ一つに、丁寧な確認とカスタマイズが必要です。
上記のことは最低限のことになりますので、必要に応じて、然るべき対応をしましょう。
契約書を作る意味
ここからは、契約書を作成する意味について解説していきます。
言わずもがなですが、あらゆるリスク回避につながる重要な書類になります。
何かあった時のために必須です!
それぞれ、詳細を見ていきましょう。
約束事を明確化するため
クライアントとの契約書には、約束事が明確に記載されていなければなりません。
コンサルタントとクライアント双方が、合意した業務内容、報酬、期間(納期)などの事項を明記する必要があります。
契約後、プロジェクトがスタートしたときに、約束事を明確化してなかったため、誤解やトラブルになってしまったという事にならないように、契約書はしっかりと作っておきましょう。
新たな契約の雛型として活用できる
一度行った取引で契約書を作成しておけば、他の案件を獲得した際に、1から契約書を作成せずに、既存の契約書を雛型として活用できます。
新しい契約用に改変して利用できますね!
責任の所在を明確化するため
責任のあり方についても、コンサルタントとクライアント双方に明確に契約書に記載することになります。
仮に、契約書に違反するような行為を一方が行ったとすると、当然のことながら、違反した当事者はその責任を負うことになります。
このようなことが明記されることによって、予防策としても効果を発揮します。
双方の業務運営を支援するため
そもそも契約書は、コンサルタントとクライアントがスムーズに業務を遂行するための取り決めを記すものです。
契約書に明記されている、業務内容、期間、報酬などに基づいて、プロジェクトが滞りなく進捗することを、サポートできます。
ですので、契約書をしっかりと作り込んでおけば、さまざまなトラブルや万が一の時に、落ち着いて対処できる安心ツールとなり得ます。
具体的な契約の取り方
ここまでに、必ず知っておきたい契約の種類、契約書の作成方法について解説してきました。
最後に、契約自体の具体的な取得方法を見ていきましょう。
契約を獲得するまで
コンサルティング契約を取る場合、例えば以下のような流れが想定されます。
- 顧客の選定
- 顧客との対話/状況ヒアリング
- コンサルタントからの提案/見積もり提出
- 顧客が提案内容を受諾
- 契約
顧客にアプローチするだけでなく、顧客側から問い合わせがあれば、まずは面談の設定をしましょう。
実際のニーズを聞き取り、コンサルタント側からはコンサルティング内容の提案と見積もりを提出して、相手が納得すれば契約に移ります。
提案が顧客に受け入れられてから、しっかりと契約を締結しましょう。
ここから、契約についての詳細や具体的な契約取得方法など解説していきますね。
対象の顧客にアプローチする
顧客にアプローチするには、自分の得意分野や強みについて、自ら情報発信を怠ってはいけません。
それが、最終的に顧客を呼び込むきっかけになります。
詳しい集客方法については、下記の記事が参考になります。是非ご覧ください。
また、自分の専門性と会った事業を展開している顧客を見つけアプローチをすることも可能でしょう。
効率的な営業活動をしましょう!
また、既存のクライアントや、人脈を頼りに、顧客を紹介してもらうという手もあります。
活用できるリソースは全て使ってアプローチすることをお勧めします!
アプローチした顧客から、レスポンスが返って来たら、日時を決めて、さっそくアポイントを取りましょう。
ニーズを聞き出す
最初のアポイントまでに、対象の顧客の企業情報などは徹底的に調べて面談に臨みましょう。
インプットした顧客情報をもとに、最初の面談では、「貴社を理解しています」というアピールをして本題に入りましょう。
顧客理解度の高いコンサルタントは信頼を得やすいですからね!
まずは、その顧客企業が困っていること、課題を徹底的にヒアリングします。
顧客が気づいていない潜在的なニーズを引き出せるかもしれません。
その中で、何が本質的な課題か見極め、ひとつずつ、顧客に確認をしながら、着手すべき問題を洗い出していきましょう。
課題が明らかになってきたら、改めて、ご自分が提供できるサービスを説明しましょう。
ここで重要なのが、自分のコンサルティングサービスの営業をする前に、きちんと顧客に寄り添って、ニーズをとらえ、顧客からの信頼が得られているか?という事になります。
ここまで来て、先方が良しとすれば、いよいよ契約を進める段階です。
契約内容を決定する
ニーズのヒアリングによって、顧客の抱える課題が明確になったら、委任契約と請負契約どちらが適切かを判断します。
それぞれの契約をした場合、働くイメージとしては以下のようになります。
- 準委任契約であれば、コンサルタントがクライアント企業の一員として、一定期間協力する働き方
- 請負契約であれば、クライアントから指定された特定の業務に着手する働き方
この場合は業務範囲や期間、報酬などが明確に規定されることになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
コンサルティングの契約を取る方法のまとめとしては、以下のようになります。
- 契約の種類について
- 契約の実例
- 契約書の作成は重要
- 契約書を作成する意味
- 契約の獲得方法
契約書類をしっかりと作り、安全かつスムーズな契約にしたいですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!